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「襟を正す」の襟って、どこのこと?
きものマガジンTPO&豆知識
ひもとく、きもの No.3 / 着物から生まれたことば
「襟を正して臨みます」――この襟、どこにあると思いますか?
大事な場面で気持ちを引き締めるときに使う「襟を正す」。スーツのシャツの襟を思い浮かべる方も多いかもしれません。
でも、この言葉が生まれたのは、洋服が日本にやってくるずっと前のこと。今回は、ふだん使う言葉にひそむ「着物」をひもといてみましょう。
答えは、首元をぐるりと縁どる「衿」
「襟を正す」の襟は、着物の首まわりを縁どる細長い部分のことです。着物では「衿」とも書きます。
着物は、左右の衿を胸の前で重ね合わせて着るもの。衿の合わせが崩れていると、それだけでだらしなく見えてしまいます。そこで、衿をきちんと整え、身なりと姿勢を正すこと――それが転じて、気持ちを引き締めて物事に向き合うという意味になりました。

「襟を正す」のルーツは、2000年以上前の中国
「襟を正す」のもとになったとされるのが、中国の古い言葉「正襟危坐(せいきんきざ)」。襟を正して、きちんと座る、という意味です。前漢の時代に書かれた歴史書『史記』にも登場する、由緒ある表現なのだそうです。

ちなみに、衿は昔「領(くび)」とも呼ばれていました。前回ご紹介した、着物の「衽(おくみ)」のもとの呼び名が「大領(おおくび)」だったのも、その名残です。
首元の白いラインは、取り替えできる「半衿」
着物姿の首元にのぞく、細い白いライン。これは着物の下に着る長襦袢(ながじゅばん)の衿に縫いつけた「半衿(はんえり)」です。
首元は汗や皮脂で汚れやすい場所。半衿は取り外して洗ったり、付け替えたりできるように工夫された布なのです。白が基本ですが、色や柄、刺繍の入ったものもあります。
江戸の女性は、半衿に「千金」を投じた
この半衿、実はかつて大ブームを巻き起こしたおしゃれアイテムでした。
江戸時代の終わりごろ、大人の女性の着物は渋い色柄が好まれるようになり、おしゃれの見せどころが首元の半衿へと移っていきます。豪華な刺繍の美しさを競い合い、半衿に大金を投じる人まで現れたほどだったとか。
大正時代にも半衿のおしゃれは再び盛り上がり、古典柄の刺繍に加えて、西洋の草花模様やエジプト風の文様まで、首元を彩りました。ほんの数センチの幅に、それぞれの時代の「粋」が詰まっていたのです。


話したくなる一言
「江戸時代には、半衿ひとつに大金をかける女性もいたんだって」